このページの要点
- 問い合わせ内容、顧客情報、対応履歴、FAQ、業務フロー、ID・パスワードを類型で列挙し、担当者が作る記録も対象に入れる。
- 元の委託者との契約の守秘義務・再委託の制限に合わせ、外注先にも同等以上の義務を課す。再委託は承諾制か通知制かを選び、期間もそろえる。
- 詳細版(約4,800字)と簡易版(約1,300字)の差は、事故の報告の時間、返還の完了の確認、認証情報の共有の禁止に出る。簡易版にも事故・返還・存続・賠償の条は残す。
- 在宅の作業場所、私物端末、共有アカウント、ログの取得は、目的を限って定める。相互型なら義務の主体を「受領当事者」と明記する。
結論:問い合わせ内容とIDを類型で列挙し、元の委託者との契約につなげ、詳細版と簡易版の差を「期限と証明」で決める
カスタマーサポート(問い合わせ対応)の代行や、オンライン秘書・事務代行の仕事は、依頼者から預かった顧客対応や日々のやり取りの中に入り込む仕事です。問い合わせの文面、顧客の氏名や連絡先、過去の対応履歴、社内の業務フローやFAQ、管理画面のIDとパスワードなど、外に出れば依頼者の信用に直結する情報を、在宅の担当者が日常的に扱います。しかも、代行事業者がさらにオペレーターへ再委託する形になると、情報は「元の委託者(クライアント)→代行事業者→外注のオペレーター」と三段に流れます。
カスタマーサポート代行で情報が流れる三段
このページが扱うNDAは、代行事業者と外注のオペレーターの間(右の矢印)が中心です。代行事業者が元の委託者との契約で負っている義務を、そのまま下に流せるかが設計の要になります。
先に結論を四つ挙げます。
- 秘密情報は、問い合わせ内容、顧客情報、対応履歴、FAQ、業務フロー、ID・パスワードのように、類型で列挙する。オンライン秘書なら、チャットのやり取り、画面共有、作業途中の資料も入れる。
- 元の委託者との契約の守秘義務と、再委託の禁止・制限に合わせて、外注先に課す義務を組む。再委託は、承諾制にするか、通知制にするかを選ぶ。
- 詳細版(約4,800字)と簡易版(約1,300字)の差は、条の数よりも「期限」と「証明」に出る。簡易版にも、事故時の対応、返還、存続、賠償の範囲は残す。
- 在宅作業の場所、私物端末、共有アカウント、ログの扱いは、簡易版でも一文では済ませない。
参考にしているのは、カスタマーサポート代行業を営む個人事業主が、オペレーターへの再委託のために用意した、業務委託基本契約書とNDAの詳細版・簡易版、人材関連の事業者が個人に求職者の支援業務を委託するときのNDAの詳細版・簡素版、オンライン秘書・事務代行を営む個人事業者のNDAです。
秘密情報の類型:問い合わせ内容、対応履歴、FAQ、ID
カスタマーサポート代行のNDAの詳細版は、秘密情報を六つの類型で書いています。「営業上・技術上の情報」と一括りにせず、現場の担当者が「これは秘密だ」と分かる言葉で並べるのが狙いです。類型ごとの考え方は業種の言葉で列挙するに書いたとおりです。
カスタマーサポート代行・オンライン秘書の秘密情報の類型
| 類型 | 具体的な例 | 漏れる場面 |
|---|---|---|
| 顧客に関する情報 | 問い合わせ内容、顧客情報、対応履歴 | 画面のスクリーンショットを知人に見せる、対応事例として自分のSNSに書く |
| 業務運用に関する情報 | 業務マニュアル、FAQ、業務フロー、テンプレート | 別の依頼者の仕事に流用する、マニュアルを写して持ち出す |
| 認証情報 | ID、パスワード、その他の認証情報、アクセス権限 | 家族や同僚に共有する、私物の端末に保存する |
| 事業に関する情報 | 営業情報、ノウハウ、技術情報、業務運用情報 | 雑談で他社の担当者に話す |
| 個人情報 | 個人情報保護法に定める個人情報 | 問い合わせ文に含まれる氏名・住所を転記する |
| やり取りの記録(オンライン秘書で特に) | 電子メール、チャットツール、クラウド上のやり取り、画面共有・オンライン会議の内容、作成途中の資料、翻訳データ | チャットの履歴が個人のアカウントに残る、会議の画面を録画する |
| 性質上秘密にすべき情報 | 上のどれにも当たらないが、性質や開示のされ方から秘密として扱うべき情報 | 例示にない情報が出てきたとき |
オンライン秘書のNDAは、個人情報に加えて要配慮個人情報も類型に入れています。問い合わせの内容に、病気や障害などの事情が書かれている業務かどうかで、入れるかどうかを決めます。
問い合わせ内容と対応履歴を類型に入れるときに、見落としやすいのが「対応履歴は担当者自身が作る」という点です。オペレーターが入力した対応履歴、チャットのログ、作成したFAQ、テンプレートは、受け取った情報ではなく、業務のなかで作られる情報です。NDAの定義が「開示を受けた情報」だけを対象にしていると、担当者が作った記録が外れます。そこで詳細版は、定義の最初に「開示し、又は相手方が取得した一切の情報」と書き、作成・取得した情報も含めました(取得し、作成した情報へ広げる考え方)。
そのうえで、これらの記録の権利の帰属はNDAでは決めず、「成果物に係る権利の帰属は、原契約(業務委託契約)の定めに従う」としています。NDAで決めるのは、守る義務までです。対応履歴やFAQの著作権をどちらが持つかは、業務委託契約の側の問題で、NDAに混ぜると二つの書面の関係が分かりにくくなります。
元の委託者との契約に連動させる:再委託の承諾制と通知制
代行事業者は、一般に、元の委託者に対して守秘義務を負い、再委託を制限されていることも少なくありません。この義務を外注のオペレーターに流さずにいると、事業者自身が元の委託者に対して契約違反になります。連動させる設計には、三つの要点があります。
一つ目は、再委託の入口です。業務委託基本契約の詳細版は、業務は受託者の責任と裁量で行うことを前提に、第三者に委託し、またはこれに準ずる形で関与させることを禁じています。例外は、委託者が書面または電磁的方法で明示的に承諾した場合だけです。承諾した場合でも、受託者は、第三者に同等の義務(秘密保持、個人情報保護、情報セキュリティなど)を課し、その行為を自分の行為と同じ責任で負い、選任・監督の責任を免れません。簡易版の基本契約も、事前の承諾なく再委託してはならず、再委託しても第三者の行為の責任を負う、と短く残しています。
二つ目は、承諾制と通知制の選び方です。オンライン秘書・事務代行のNDAは、再委託を「事前の通知」で認めたうえで、再委託先が秘密情報、個人情報、顧客情報、アカウント情報などの重要な情報にアクセスするときだけ、事前の承諾を要するとしています。再委託先は、同等以上の義務を負い、選定と監督に合理的な注意を尽くします。
再委託の書き方:カスタマーサポート代行・オンライン秘書上ほど強く縛る書き方
- 原則禁止、書面または電磁的方法による明示の承諾承諾があっても、同等の義務を課し、第三者の行為の責任と選任・監督の責任を負う。(カスタマーサポート代行の基本契約・詳細版)顧客の個人情報と認証情報に常に触れる業務
- 事前の通知で足りるが、重要情報に触れるときは事前承諾再委託先に同等以上の義務を課し、選定・監督の注意義務を負う。(オンライン秘書のNDA)翻訳や資料作成など、業務の一部だけを外に出す場面
- 事前承諾を要し、再委託先への義務の中身は書かない再委託しても第三者の行為を自己の行為と同一の責任で負う。同等の義務を課す定めはない。(簡易版)再委託をほとんど想定しない業務
三つ目は、個人データが連鎖する場面です。元の委託者が代行事業者に個人データの取扱いを委託し、代行事業者がさらにオペレーターに委託するとき、元の委託者は委託先を監督する義務を負い(個人情報保護法25条)、その監督は、委託先を通じて再委託先にも及びます。個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)3-4-4は、委託先が再委託しようとするときに、委託元が、再委託先、再委託する業務の内容、再委託先での取扱方法について、委託先から事前報告を受け、または承認を行うことが望ましい、としています。そのため、代行事業者は元の委託者から、再委託先を知らせるように求められる前提で、外注先の名簿とNDAの写しを出せる状態にしておくと安全です。元の委託者との契約が準委任に当たる場合は、民法644条の2第1項(656条で準委任に準用)が、受任者である代行事業者が、委任者の許諾なく復受任者を選ぶことを制限しています。外注先に業務そのものを任せる形は、これに当たり得ます。
第○条(再委託)
1乙は、甲の書面又は電磁的方法による事前の承諾なく、秘密情報を取り扱う業務の全部又は一部を第三者に再委託してはならない。
2甲が前項の承諾をした場合であっても、乙は、再委託先に対し、本契約と同等以上の秘密保持義務、個人情報保護義務その他の情報管理義務を課し、これを遵守させる。
3乙は、再委託先の選定及び監督について合理的な注意を尽くし、再委託先の行為について、自己の行為と同一の責任を負う。
再委託の条の考え方を、条文の形にまとめたものです。元の委託者との契約が再委託を制限している場合は、第1項の承諾に、元の委託者から得た承諾を前提とする旨を加えます。
期間の連動にも注意します。たとえば、元の委託者との契約が、契約終了後3年の守秘義務を定めているのに、外注先とのNDAが1年で切れる定めだと、2年目に外注先が漏らしたとき、代行事業者だけが元の委託者に責任を負うことになります。外注先に課す期間は、元の委託者に負う期間以上にそろえるのが基本です(バックトゥバックの考え方)。また、秘密情報の窓口として、情報を管理する責任者を代行事業者側で決めておく方法もあります。これは事務所の書類にある条ではなく、承諾制や通知制を運用するときの一般的な工夫として、誰が承諾を出し、誰が再委託先の名簿を持つのかを決めておく、という意味です。
詳細版と簡易版を比べる:削ってよい条と、削ってはいけない条
カスタマーサポート代行業を営む個人事業主の案件では、業務委託基本契約とNDAについて、それぞれ詳細版と簡易版を作りました。NDAの詳細版は16条(約4,800字)、簡易版は9条(約1,300字)です。簡易版は、案件ごとに契約書を長々と読ませたくない、短期の仕事や、単純な問い合わせ対応の担当者に使う、という場面を想定しています。2つの版を並べると、どこを削り、どこを残したかが見えます。
NDAの詳細版と簡易版の比較
| 論点 | 詳細版(16条) | 簡易版(9条) |
|---|---|---|
| 秘密情報の定義 | 六つの類型を列挙し、「性質上又は開示の態様に照らし秘密として扱われるべき情報」を加える | 「開示し、又は開示に基づき取得した一切の情報」とだけ書く |
| 除外事由 | 公知、事前の保有、第三者から適法に取得、法令・命令により開示を求められた情報の4つ。法令による開示は、事前通知と最小限の開示を求める | 同じ4つの号。法令・命令による開示の手続は書かない |
| 第三者への開示 | 法令に基づく場合を除き禁止し、法令による開示は、事前に通知して最小限にとどめる | 禁止するが、業務遂行上必要な範囲で当該業務に関与する者に開示する場合を除く |
| 情報の管理 | アクセス権限の範囲内の利用、認証情報の管理と共有の禁止、公共の無線LANの禁止、外部記録媒体や私的なクラウドへの保存の禁止 | 「合理的かつ適切な安全管理措置」と書く一条だけ |
| 家族などへの遮断・ログ | 家族や同居人に見られないようにする措置(画面ロック、作業環境の分離)と、業務システムのログの閲覧・保存に、あらかじめ同意する条 | 置かない |
| 複製・持出し | 必要最小限の複製に限り、事前の承諾なく業務場所の外へ持ち出さない | 置かない |
| 事故の報告 | 認識した時点で、直ちに(遅くとも当日中に)報告。報告事項と追加報告を定める。再発防止策は義務にせず、協議で決める | 速やかに報告し、被害の拡大防止の対応をする |
| 終了時の取扱い | 復元できない方法で消去し、または指示に従い返還・廃棄。完了後は求めに応じて報告・確認。法令上の保存義務は例外 | 遅滞なく返還又は消去する |
| 賠償 | 通常かつ直接の損害に限る。故意・重過失のときは、逸失利益、間接損害、特別損害まで | 通常かつ直接の損害に限る。ただし、故意又は重過失による場合はこの限りでない |
| 存続 | 公知となるまで、または正当な理由により秘密性を失うまで。個人情報は、法令に従い必要な期間 | 公知となるまで、またはその性質上秘密性を失うまで |
| 権利帰属・協議条項 | 秘密情報の権利は開示者に帰属。成果物の権利は原契約に従う | 置かない(基本契約の簡易版が、成果物の著作権を委託者に帰属させる) |
表を見ると、簡易版が落としたのは、主に三つです。一つ目は、定義の例示です。二つ目は、運用の細目(家族への遮断、ログ、複製・持出し、認証情報の共有の禁止)です。三つ目は、事故と返還の「期限」と「証明」です。一方で、簡易版にも、目的外利用の禁止、事故時の対応、返還、損害賠償の範囲、存続は残っています。つまり、簡易版は「条を削って、条の精度を落とした」書面であり、条そのものをなくした書面ではありません。
簡易版を選ぶ際は、落ちた精度が、現場の事故にどう響くかを考えます。
- 事故の報告:「当日中」が「速やかに」に変わる。担当者が自分で判断して数日遅らせても、契約違反と言い切りにくくなる。元の委託者から、事故の報告を一定時間内に求められている代行事業者は、簡易版でも時間の定めを残す。
- 返還・消去:「復元できない方法」と、完了の報告・確認が消える。消去したと主張されても、確かめる手段がない。担当者が自分の端末にデータを残しやすい業務では、報告だけでも残す。
- 第三者への開示:「当該業務に関与する者」への開示が例外として認められる。関与する者の範囲が書かれていないため、友人に手伝わせた場合に、関与者と言い張られる余地がある。直接関与する者に限るなどの絞りを入れる。
- 認証情報:IDとパスワードの共有禁止が個別には書かれない。共有アカウントの使い回しは、CS代行で事故につながりやすい場面の一つなので、一文は残す。
- 法令による開示:除外事由に入れたままで、通知の手続がない。この扱いは除外事由・立証方法・残存知識で述べたとおり、除外事由と手続を分けて書くほうが、開示した情報が秘密のまま残る。
なお、簡易版のNDAを使うときは、基本契約の側にバックアップを置いておく設計もあります。簡易版の基本契約は、「秘密情報の取扱いは別途のNDAに従う。NDAが結ばれていない場合でも、本業務に関連して知り得た情報を第三者に開示・漏洩してはならない」と書いています。NDAの締結が遅れても、基本の義務だけは、基本契約が受け止める構造です。詳細版の基本契約は、反対に、NDAと基本契約の内容が抵触するときはNDAを優先する、と書いています。簡易版と詳細版で優先関係の向きが違うので、版を差し替えるときは、基本契約とNDAの組合せを必ず確かめます。
ヒヤリングで確かめること詳細版と簡易版のどちらを使うかを決めるために
- 担当者は、顧客の個人情報や認証情報に触れますか。触れるなら、詳細版か、簡易版に認証情報の条を足したものにします。触れないなら、簡易版でも足ります。
- 元の委託者から、事故の報告の時間や、再委託の条件を求められていますか。求められているなら、その時間と条件を、外注先に課す条に写します。簡易版では写せないので、詳細版の該当条を使います。
- 担当者は、自宅で作業しますか。家族と同居していますか。在宅で、同居人がいるなら、画面ロックや作業環境の条を残します。
- 業務は、短期の単発ですか、継続ですか。単発なら簡易版、継続なら詳細版にします。単発から継続に変わったときは、版を差し替えて結び直します。
- 再委託をするか、担当者が他の人に手伝わせる可能性はありますか。ある場合は、簡易版の「関与する者」の例外を絞るか、再委託の条を足します。
在宅作業・私物端末・共有アカウントのルール
カスタマーサポート代行の業務は、在宅で行われるのが普通です。業務委託基本契約の詳細版は、業務場所を、安全管理の措置が講じられた自宅などに限り、不特定多数が出入りする場所(カフェ、コワーキングスペースのオープンスペースなど)での作業を禁じています。個室を借りる場合は、事前に場所と使い方を報告させます。家族などに業務情報が見られたり聞かれたりしないよう、画面ロックや作業環境の分離といった措置も求めます。家族の扱いを「禁止するか、条件付きで認めるか」で選ぶ考え方は目的外利用と開示の範囲に書きました。
私物端末は、一律に禁止するか、条件付きで認めるかを選びます。オンライン秘書のNDAは、私物端末を利用する場合に、パスワード管理、アクセス制限、ウイルス対策などの安全管理措置を講じることを条件としています。反対に、詳細版は、外部記録媒体への複製や私的に管理するクラウドへの保存を、事前の承諾なく行うことを禁じています。前者は、秘書が複数の依頼者の仕事を自分の道具で処理している実態に、後者は、業務システムの中で完結する問い合わせ対応に、それぞれ合わせた書き方と見られます。
共有アカウントの扱いは、さらに事故が多い箇所です。詳細版は、ID、パスワード、認証情報を厳重に管理し、第三者に開示・貸与・共有してはならないとしています。オンライン秘書のNDAは、アカウントやIDの共有が必要になる場合、共有する側(開示当事者)が自分の責任で共有を行い、受け取る側は善良な管理者の注意で管理するとし、不正アクセスなどは、受け取る側に故意または重大な過失がなければ責任を負わない、と書いています。共有アカウントを個別のIDに分けると、誰がいつ操作したかが記録に残ります。ログ管理の条は、そのためにあります。詳細版のログ管理は、次の形です。
第○条(ログ管理)
1甲は、本業務の適正な履行の確認、品質管理、セキュリティの確保及びトラブル対応の目的の範囲内で、乙が本業務の遂行に関連して使用するシステム(チャット、顧客管理システム、FAQその他これらに準ずるものを含む。)の操作履歴、アクセス記録その他のログ情報を、閲覧し、取得し、又は保存することができる。
2前項のログ情報の取扱いは、前項に定める目的の範囲に限定され、甲は、当該目的を超えてログ情報を利用してはならない。
3乙は、本条に定めるログ情報の取扱いについて、あらかじめ同意する。
詳細版のログ管理の条の考え方を、条文の形にまとめたものです。ログを見る目的を限定し、目的外の利用を禁じているところが、この条の要点です。
担当者が雇用されるスタッフの場合は、違約金や賠償額の予定を置くことが労働基準法16条に触れるおそれがあります(損害賠償・違約金・上限)。業務委託の担当者に対しても、ログの取得や当日中の報告を広げすぎると、指揮命令が強いと見られる材料になり得るので、目的の範囲を条文に残しておきます。
片務型か相互型か、そして電子契約での締結
NDAは、一方だけが情報を受け取る片務型にするか、双方が情報を出し合う相互型にするかを、最初に決めます。カスタマーサポート代行のNDAは、「甲又は乙が相手方に開示し」と相互の体裁を取りながら、義務を負うのが主に外注先という構造です。条文の主語を省いた書き方(「秘密情報は…取り扱われるものとする」)は、誰の義務かを読み取りにくくします。相互型で書くなら、オンライン秘書のNDAのように、義務を負う主体を「受領当事者」と明記し、開示者が誰かを定義で決めておきます。一方向の情報しかない業務なら、人材関連の事業者の片務型のNDAのように、受託者だけが義務を負う形にして、条の数を絞るほうが、読みやすくなります。
片務型か相互型かの選び方
出す側(開示者)の設計
- 情報の流れが一方向なら、片務型にする。受託者の義務だけを厚く書き、条の数を絞れる。
- 受託者が自分のやり方や道具を依頼者に見せる業務(秘書、事務代行)では、相互型にし、受託者の情報も守る。
- 相互型では、義務の主語を「受領当事者」と書き、条ごとに誰の義務かが分かるようにする。
- 片務型でも、詳細版と簡易版の二つを用意し、業務の重さで使い分ける。
受け取る側(受領者)の点検
- 片務型で自分だけが義務を負うとき、自分のノウハウや成果物の使い方が別の書面で守られているかを確かめる。
- 賠償の上限の物差し(報酬額など)を確認する。オンライン秘書のNDAは、上限を「直近1か月分の受領報酬額」から、「実際に受領した報酬額、実績がなければ少額の定額」に改め、故意・重過失は上限の外にした。
- 生成AIの利用を認めるかを確かめる。オンライン秘書のNDAは、業務の効率化や翻訳の補助に必要な範囲で認め、依頼者が禁止・条件を指定したら従うとした(生成AIへの入力)。
人材関連の事業者の片務型NDAは、詳細版が約8,000字、簡素版が約800字です。簡素版は、定義と除外、取扱い、開示の例外、返還・廃棄、存続(公知まで、または契約終了後5年のいずれか長い期間)、違反時の責任(損害賠償請求、情報の回収・削除、差止請求)、準拠法・管轄の7条に絞っています。
電子契約での締結も、書類の最後に確かめます。詳細版も簡易版も、NDAの末尾に「電子契約による締結」の条を置き、電磁的記録として作成し、電子署名が付与された時点で成立し、書面と同一の効力を持つ、と書いています。個別の業務の発注は、基本契約の側で、電子メールなどの意思表示が合致した時点で成立するとしています。オンライン秘書のNDAは、書面と電子のどちらでも締結でき、電子の場合は電磁的記録を原本とし、印刷したものを写しとするとしています。NDAの電子契約化は、締結の手間を減らし、版を差し替えたときの結び直しも楽にします。署名の回収や保管の運用は業務上の守秘義務誓約書で書いた考え方が参考になります。
会計データを扱う外注先との間でも、似た設計が必要になります。会計データに絞った二本立てのNDAは記帳代行・経理代行の秘密保持契約書を参照してください。個人データの取扱いの委託を別の覚書で定める場合は、個人情報の取扱いに関する覚書の設計が参考になります。
起きがちなこと
よくあるご質問
カスタマーサポート代行のNDAでは、秘密情報として何を書けばよいですか?
問い合わせ内容、顧客情報、対応履歴、業務マニュアル、FAQ、業務フロー、テンプレート、ID・パスワードなどの認証情報、個人情報を、類型に分けて書きます。担当者が作る対応履歴やログも対象に入れるため、定義は「開示を受けた情報」だけに限らず、取得・作成した情報まで広げます。
元の委託者との契約と、外注先とのNDAは、どうつなげればよいですか?
元の委託者との契約が負わせている守秘義務と再委託の制限を、外注先にも同等以上で課します。再委託は承諾制か通知制かを選び、承諾した場合も、再委託先に同等の義務を課し、選任・監督の責任を負う形にします。外注先に課す期間は、元の委託者に負う期間以上にそろえます。
NDAの簡易版では、どの条を削ってよいですか?
定義の例示や、家族への遮断、複製・持出しの細目などは省けますが、目的外利用の禁止、事故時の対応、返還、存続、賠償の範囲は残します。事故の報告の時間、返還の完了の確認、認証情報の共有の禁止は、簡易版でも一文残すのが安全です。
在宅のオペレーターが私物の端末を使うことは、認めてよいですか?
一律の禁止か、安全管理措置を条件とした許容かを、業務に合わせて選びます。顧客の個人情報や認証情報に触れる問い合わせ対応なら、外部記録媒体や私的なクラウドへの保存を禁じ、業務システムの中で完結させるほうが合います。複数の依頼者の仕事を自分の道具で行う秘書なら、条件付きで認めます。
相互型と片務型は、どう選べばよいですか?
情報の流れが一方向なら、受託者だけが義務を負う片務型で足ります。受託者が自分のやり方やツールを依頼者に見せる業務では、相互型にし、義務の主体を「受領当事者」と明記します。どちらでも、業務の重さに合わせて詳細版と簡易版を用意しておくと使い分けられます。
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